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二人ぼっち
◆
そうして。
更に一週間が経過して。
あっという間に数日がたった。
近頃リンネは、何処か思い詰めた表情になって。
会話も、笑顔も無くなっていた。
ラルが話し掛けても元気がなく、涙ぐむばかり。
本人は病気ではないと主張するが、ラルは気掛かりだった。
「リンネ。今夜少し、星を見に行かないか?」
朝、ラルはそんな提案をリンネにした。
「──良いよ。丁度今夜、ラルに伝えたい事があったから」
それはきっと、黒印の事だろうと思った。
リンネの黒印を祓う筈の旅が、いつの間にか共同生活に落ち着いて、進展が無いまま放置されている。
「じゃあ、今日は早く戻るから。俺が帰ったら、街外れの丘まで行こう」
思えばリンネの気持ちを確認しないまま、この街への滞在を決めてしまっていた気がする。
もう一度、リンネとちゃんと話したい。
彼女の不安を逃げずに、全部受け止めるつもりで。
ラルが長期間滞在した事もあってか、その日の被害報告は非常に少なく、明日届けが無ければ、祓い終わりと見て良さそうである。
なので、ラルは予定より早くリンネの元に帰る事が出来た。
家に帰ると、リンネは少し驚いた様子で。
しかし直ぐに微笑んで「お帰り」を言ってくれた。
いつもより、ほんの少しだけ明るい声色である。
久しぶりに二人で昼食を食べて、街を見て回った。
最近元気の無かったリンネだったが、二人で過ごす内に自然と笑みが零れる。
楽しむ反面、ラルは安堵した。
そして約束通りに星空も見に行った。
リンネは目を輝かせて喜んだ。
もう、いつものリンネに戻っていた。
杞憂だったかも知れないと、ラルは笑った。
だが、家に帰ろうとしたその時。
リンネが、足を止めた。
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