君と出会うという事

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 ◆ 「……結局、今日は野宿か」  陽も暮れた頃、ラルは半笑いで河原近くの木の下に寝っ転がる。  あれから村で20人程の黒印を祓った。  謝礼の嵐から逃げる様に出立した為、中途半端な場所での休息となった事が、いつも通りで笑えた。  腹の虫は鳴くが、食料は底を突いている。  近くに川が流れていたのは不幸中の幸いであった。  少なくとも、飲み水は確保出来るだろう。 (ああ……しまった。せめて食べ物分けて貰うんだった。……あ、いや、でもなぁ。この辺も食糧難だって聞くし)  ラルは溜め息と共に自身の右手を顔の前に持って来る。  握れば、手袋の下からミシミシと金属が擦れる音がした。 (今は悪魔の呪いを祓う力より、食べ物が欲しいよな)  そんな事を考えながら目を閉じ、疲労感からラルは黒い眠りへと落ちて行く。 ─ああ、旦那様。この子に祓い師は無理なのでは?─ ─肝心の煌力がこれでは─ ─全く、同じ兄弟だとは思えん─  周囲の落胆。 ─お前は、代々優秀な祓い師を排出してきた、我がアートリス家の恥だ!─  いつも比べられてきた。 ─右手を呪いに喰われただと!? この役立たずが!─ ─アートリス家の人間が悪魔の呪いに遅れを取ったとなれば、世間の笑い者です─ ─お前は二度と、俺の前に顔を見せるな!─
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