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銀色
(『夜の呪い』の欠片か……?)
ラルの鋭利な視線の先。
たっぷりと時間を費やして灰の中から這い出して来たのは、麗しき少女であった。
生きて、動いている。
灰被りの彼女。
「き、君は……一体?」
驚愕しつつも、警戒は怠らない。
すると、灰で汚れた銀髪と裸体を隠す様子も無く、少女は小首を傾げてラルに訊ねてきた。
「もしかして、私を知ってる人?」
「……。……何だって? え?」
ラルがそう言うと、少女は表情を変えずにポンと両の手を打った。
「あ、知らない人。……お騒がせしました」
「……はぁ、どうも」
少女がペコリと頭を下げたので、取り敢えず応じたラル。
「それじゃあ、私はこれで」
と、やはり抑揚の足りない声色で軽く手を振って、離れていく彼女。
この夜更けに、一人で、森の中を。
裸で。
「いや、ちょっと待てぇ!」
ラルは咄嗟に脱いでいた上着を掴んで、彼女を追い掛けた。
少女は立ち止まって振り返り、少しだけ目を丸くしてみせる。
「君のような正体不明の奴に、出来れば首を突っ込みたくないけどな!」
ラルは早足で彼女へと迫ると、上着を掴んでいる右手を少女へと伸ばし、自らは視線を切った。
「ほら。取り敢えず、これ着ろ」
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