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火は直ぐに大きくなり、辺りを煌々と映し出す。
リンネは両の掌を火に翳し、恍惚な表情を浮かべて上着に顔を半分埋めた。
「……ラル、良い人」
「別に、大した事じゃないだろ? それより、少し暖まったら、その灰と炭落としたらどうだ? 向こうに川があるから」
「うん……」
リンネは頷き、ぼんやり火の前に座っていたが。
暫くすると立ち上がり、ラルに言われた通り川へと向かった。
一息吐くラル。
(女の子、だよな……只の。寝ていた所が偶然火事になって、偶然無事だった……とか、ないよな)
何者なんだ、彼女は。
このまま首を突っ込んで大丈夫だろうか。
ラルの不安は尽きなかった。
だが、色んな意味で隙だらけの彼女をこのまま放っておく事も出来ない。
そんな葛藤を抱えている内、遂には夜が明け初め、辺りが明るくなってしまう。
「おいおい……」
リンネは、まだ戻らない。
いや、考えてもみれば戻る保証は無かった。
案外、自由気ままに出立している可能性だってある。
その時は上着を諦めれば良い。
──しかし。
「アイツ、まさか溺れて……!」
ラルは先ず、素性も知らない彼女の身を案じた。
真っ直ぐ川の方向へ向かって走っていた。
一気に川原へと駆け降りるつもりで、全速力だ。
「リンネッ!」
「──何?」
入れ違う様に。
隣の茂みから姿を見せた彼女。
「って、えええ!?」
勢いを殺せず、かといって上手く下る事も出来ず。
ラルは坂を転がり落ち、そのまま浅瀬に。
最悪だった。
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