銀色

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「……ラル、大丈夫?」  反転した視界の中でリンネが見下ろす。  その手には、蔦で縛られた魚が何匹か。  どうも川魚を捕っていたらしい。 「あ、いや……俺も身体洗おうと思ってな」 「……嘘。落っこちてた」  リンネがコロコロと笑った。  連れてラルも笑う。  笑うのは久しぶりだったから、少し引き笑いになる。  川から戻ったばかりのリンネも、今落っこちた自分も、全身ずぶ濡れだ。  二人で焚き火の側に寄って、枝に刺した魚を遠火で焼きながら暖を取る。  微睡む朝焼けの空に、生欠伸一つ。  ラルは膝を抱えて座る隣りのリンネを、涙目で見た。 「それで? お前、何者なんだ?」  焼けた魚と共に、ラルはそんな言葉を彼女へと渡した。  自分も枝に刺さった魚を持ち、リンネが這い出た灰の山を指す。  リンネは。  一度ラルの表情を伺った後、一口魚を齧ってから質問に答えた。 「私には、悪魔の呪い……黒印が憑いているの」 「……。」  ラルの右手の繋ぎ目が僅かに反応した。  リンネは上着を少しだけ開き胸元を見せる。  彼女の白い谷間の入口に佇んでいたのは、漆黒の印。  しかもラルがこれまでに見てきた黒印とは、明らかに異なる形状であった。 「かなりの。上位の悪魔だな」  祓い師への道が潰えても尚、僅かばかりの望みを込めて溜め込んだ知識が役に立った。  この黒印が、自分の力量では祓えないという現実すら瞬時に理解出来たのだから。
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