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「ラル、祓い師なの?」
視線から逃げる様に、リンネは胸元を隠した。
失礼、とばかりに咳払いを挟んで視線を切るラル。
「俺は違うよ」
「でも、黒印の事知ってる。どーして?」
「何て言うか……正規の祓い師じゃないんだ。資格も持ってなくて、弱い黒印しか祓えないよ。相手に出来るのは、百柱相当の下級が精々だった。君の黒印は、俺には祓えない」
ラルは自嘲する。
言い訳みたいに直ぐに結論を用意した自分が、すっかり冷めた思考回路になってしまったようで。
少し、可笑しかった。
期待されて、結果が出なくて。
それを見た周りの人間は自分から離れて行く。
それが未だに、怖かったのだ。
「悪いな」
だから、自分から無理だと素直に言う。
自分から突き放した方が遥かに、心が楽だから。
「──ラルは、どうして祓い師にならないの?」
首を傾げ、ついでに魚を食べながらリンネが訊ねた。
純正無垢な瞳が、焼けた魚とラルを交互に映す。
「い、色々……有るんだよ。祓い師になる為に必要な条件ってヤツが」
少しだけ、向きになってしまう。
胸の底がチクリと痛んだ。
「ふぅ~~ん」
知ってか知らずか、リンネはそれ以上の追及をしなかった。
魚を2、3匹食べると火の側で丸くなり、寝息を立て始める。
ラルは驚愕こそしたが、彼女を起こそうとは思わなかった。
いや正直、どうして良いか分からない。
灰の中から出て来た少女が川で魚を捕ってきて、黒印に憑かれていると言って、魚を食べて寝ている。
情報量が多過ぎた。
「……疲れたな」
呟き、ラルもゴロッと横になった。
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