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君と出会うという事
森の静寂を喰らう紅蓮の炎が、深い夜に映えていた。
周囲の大木を数本道連れに燃え広がった火はしかし、粛々と勢いを弱め、潰える。
残されたのは、炭と灰の山。
その中から人が這い出る等、誰が想像出来たであろうか。
「き、君は……一体?」
月明かりが浮かび上がらせた少女の華奢な身体を見て、その場に居合わせた青年……ラルは驚愕し、喉を鳴らした。
一糸纏わぬ姿の彼女は、灰で汚れた肉体をそのままに、真っ直ぐにラルの方を向いた。
そして、無垢な瞳で尋ねるのだ。
「……もしかして、私を知ってる人?」
ずっとずっと長い。
気が遠くなるような年月の。
これは、彼女と出会う為の。
ずっと長い旅の話だ。
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