徒口 仁世

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徒口 仁世

 集落の連中の派手なお祭りが始まった。  連中は歓声を上げながら、烏見の内臓と肉を切り刻み始める。  久しぶりの人肉を堪能できるからな。  嬉しいのだろう。  焼くなり煮るなり、好きに調理して、残さず食べてくれればそれで良い。  取り敢えず、俺は仲間に『最終処分完了』の連絡をする。  この集落に住んでいるのは、俺が集めた狂人達だ。  攻撃的で凶暴な連中を集めた。連中に理性も倫理観も存在しない。外から来たものを徹底的に排除するだけだ。  男も女も関係なく、ひたすら凶暴な狂人を集めて、生活をさせている。  近親相姦を繰り返しているから、容貌はやたらと醜くなり、性格もどんどんと人間離れしていき、やがては言葉も失い、今では何とか人間の姿を保った野獣の群れと変わらなくなってしまった。  そうなっても、身内だけはしっかりと分かっている。だから、確実に外から入ってきた連中を排除できるのだ。  獣と化した連中を管理するのは大変だが、今ではやりがいのある仕事だと確信している。  この国は死刑制度があるが、絵に描いた餅と変わりない。  死刑の判決を下しても、執行されなければ意味は無いのだ。お偉いさん達は、選挙絡みでもなければ、執行にサインをしない。  ほとんどの死刑囚が拘置所の中で、病死しているのが現状だ。  奴らの殆どが、反省もせずに、拘置所の中の限られた自由を謳歌しているのだ。  意味がない。  だから俺はこの最終処分場を創り上げたのだ。  これには、多くの人達が賛同し、協力をしてくれている。  資金に困ったことは無い。  護送中に死刑囚が勝手に逃げ出して、事故死したことについては、自業自得と皆は納得して終わりだ。  奴らにも最初で最後になるが、殺される時の地獄のような恐怖と苦しみを体験させることは、良いことだ。  俺はボロボロの汚い服を着て、顔にボロボロの白い包帯のような布を巻き付けて、連中と一緒に祭りを楽しむことにする。  外から来た人間と間違えられたら、この高貴な事業が終了になりかねない。  最も、精神科医だったから、連中の取り扱い方は心得ている。  次を担う人間を育てなければならないという課題があるが、今はその課題を忘れて、連中との祭りを楽しむことにする。  人間の肉を食べることにも慣れてきた。  祭りが終われば、暫くは集落が維持できるよう運営をしていくだけだ。  今回のクズどもを食いつくしても、食料や生活必需品を運んでくれる仲間もいるから、問題は無い。  後は、また祭りが開催できるよう、死刑囚達の調達を待つだけだ。  この国も平和ボケした輩が増えた事に伴い、自己中心的な人間が増えたおかげで、凶悪な犯罪が増えている。  連中の楽しみが途絶える事はないだろう。  問題はない! FIN
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