113人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は男の死体を引き摺り、家の影に隠し、狙いをつけた家の中へと入っていく。
人がいないのは確認済みだ。
埃が積もった部屋の中は、汚い布団、テーブルがあるくらいで、生活感が皆無な空間だった。
金はおろか、金になるような物すら一切、見当たらない。
いや、人間が生活をしていく上で必要な物も見当たらない。
どういう事だ。
いくら狂人どもの巣窟とはいえ、人間としての生活があるだろう。
俺は他の家も調べてみる事にした。
同じだった。
人間が生活をしている根拠が存在していないのだ。
家を出て、集落全体を見てみる事にする。
廃屋のような家が円を描くような感じで建ち並んでいて、中央は人が集まる広場のようになっていた。
家の影から、広場を見てみる。
狂人どもが集まって、何かを始めようとしていた。
やたらと楽しそうな雰囲気を醸し出している。人を殺した後にお祭り騒ぎをやろうとしているのか。
流石、狂人どもだな。
俺は一旦、家の裏手に回り込む。
金もなければ、車もない。どうやって生活をしているのか、分からないが、今、知る事ではない。
知る必要などないのだ。
今、必要な事は、ここから逃げることだ。
奴らを皆殺しにするのは無理だ。
逃げるしかない。
そう考えが固まった時、俺の目の前に三人の醜い男達が現れた。
醜悪な表情を浮かべ、三人は俺にゆっくりと近づいてくる。
三人は、スコップ、農用フォーク、鉈と、各々が武器を手にしている。
話し合いをする余地はなさそうだな。
仲間の仇討ちか。
やってやろうじゃないか。
さっき手斧を持っていた奴と戦ったが、こいつらは、図体がでかい分、力はあるだろうが、武器を操る技術はなさそうだからな。力任せに振り回してくるだけだ。
三人とも返り討ちにしてやるよ。
さっさと片付けて、逃げるとするか。
俺は、右手に手斧、左手にペティナイフを持ち、ニヤリと笑ってから、三人を睨みつける。
最初のコメントを投稿しよう!