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散策と言っても、下手に森の中を歩いても、迷子になって終わりだ。
最も、そうなったら、皆が手を叩いて喜ぶだろう。
「おい見ろよ。足跡があるぜ」
蛭貝が座り込み、指で指す。
「獣の足跡じゃないのか」
足跡を見る前に返答をする。
「よく見ろよ。どう見ても靴の跡だろう。続いているから、追ってみないか」
「そうだね。人が住んでいる所に辿り着けるかもしれないね」
蛭貝の提案に霧灯が賛同した。
「そうだな。人の住んでいる所に辿り着いたら、車と金を奪って、こんな薄暗いジメジメした所からおさらばできるからな」
「烏見さんらしいわね。早速、犯罪をやらかそうとしている」
墨絵が笑みを浮かべて答える。
「俺達に今更、品行方正になれって、無理な話だろうが」
「違いない」
蛭貝が笑みを浮かべて、足跡を辿って歩き出す。
足跡を辿り、三十分くらいは歩いただろうか。辺りが明るくなり、樹木の数も減ってきたように感じる。
もしかしたら、この先は多少、開けているのかもしれない。村落くらいの規模だとたすかるな。それなりの食料にありつけるし、車もあるだろう。家に現金があるかもしれない。強奪も簡単に出来そうだ。
先の事をあれこれと考えていたら、森の鬱蒼さは一気に弾け飛び、視界は一気に明るくなった。
「やたらと古い家が建ち並んでいるな。それなりの集落じゃないのか」
蛭貝が皆に話しかけてきた。
古い家と言うよりかは、廃屋のような気がするが。
「そうだな。どの家を狙う」
「もう強奪することを考えているの。少し休んでからで良いんじゃない」
墨絵が呆れた表情を浮かべて答える。
「そうだね。少し休もうよ。久しぶりに長く歩いたから疲れたよ」
霧灯は座り込んでしまった。
この程度で疲れているようじゃ、先が思いやられる感はあったが、暫くは協力体制をとるべきだろうか。
それにしても、この程度で疲れるとはな。幼女を狙う前に、その太り過ぎた身体の改善から始めるべきだと、心の中で呟いた。
「ところで、車と金を強奪する時に邪魔が入ったらどうするつもりなんだ」
「決まっているだろう。叩き殺すまでだ」
俺は蛭貝の質問に即答した。今更、何も迷う事はない。
「その時の殺しは任せるよ」
蛭貝はさらりと答えた。
任せるよときたか。最も、こいつらが殺してきたのは弱い奴らばかりだからな。仕方のない事か。こいつらが下手に戦いを挑んだら、返り討ちになりかねない。抵抗してきた奴を殺すのは、俺の役目で良いだろう。
つまらない納得感でしかないが……。
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