襲撃

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 俺達は集落を離れ、森の中へと逃げた。集落の連中は何かしらの武器を持って、追いかけてくる。  霞谷が悲鳴を上げて倒れる。 「大丈夫か。さっさと立て。逃げるぞ」  霞谷の脚を見た時、俺の発した言葉は全て無効となった。  霞谷の足首に喰い込むは、トラバサミの鋭い刃だ。黒いギザギザの刃が深々と喰い込んでいて、肉は抉れ、出血もかなり酷い。下手したら、骨までいっているだろう。  外すことが出来たとしても、この状態で走るのは無理だ。  トラバサミは使用禁止のはずだぞ!  そう思っても、あのいかれた連中に、通用することではない。  トラバサミを外している間に、奴らに追いつかれる。  見捨てるしかない……。  俺は走り出した。 「助けないの!」 「待てよ!見捨てるのか!」  墨絵と蛭貝が声をかけてはきたが、無視を決め込んだ。  死にたくはないからな。  墨絵と蛭貝がついてきた事は、気配で分かった。  霞谷の悲鳴が聞こえてくる。  助ける気は毛頭ない。  悪いが犠牲になってもらう。  連中は霞谷を容赦なく殺すだろう。いや、間違いなく殺す。  その間に逃げさせてもらう。  とにかく目もくれず走り続けた。  喉が痛くなり、呼吸が厳しくなる。こんなに真剣に走るなんて、滅多にないからな。  俺は右手を樹木に当て、一旦、走るのを止め、両肩を震わせながら、激しい息遣いをしながら項垂れた。  墨絵は座り込み、蛭貝は両手を膝に当てて、地面を見つめ続ける。  一体、どうなっているんだ。  頭の中を役に立ちそうもない憶測が、堂々巡りを始めていた。
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