おやすみハイライト

【シロ】

　人は一人じゃ生きていけない……この言葉の意味を自己定義上で解釈したのは、社会人となり十年程が経過したときのことだ。
　三十半ば目前、若者枠から外れ往く歳。そんな折、幸せな二人となった姿を見る機会は漸増し、その度に胸のどこかへ隙間風が吹きつけていた。
　つまり社会や経済的なものでは無く、単純に生涯孤独の可能性が現実味帯びたことによる精神的なもの……これを一人眠るベッドの上で真っさらな天井を臨み、ふと感じたわけである。
　言うなればお金はあるのに富は無し。
　米と野菜はいくらでも手に入るのに肉や魚は一切手に入らない。別に食うに困る訳じゃないが、そういうことではない……という感じだろうか。
　自分を執拗に卑下しているわけじゃないし、なかんずく結婚して伴侶が見つかる者を恨めしく、或いは憎く思っているわけでもない。それなりの恋愛経験だってあるわけで。ただ、現状うら寂しいのは紛れも無い事実だった。
　そこで俺は一念発起。
　それまでアンドロイドに対し否定的な考えを周囲へ発言していたくせに、止む無く手を出すことを決意した。