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1〈アヒルの子は拾われる〉
体がふわふわと浮いている感覚がした。暖かくて気持ちが良い。こんなに満たされて眠ったことなんてあっただろうか。
『祝福されし子よ、起きるんだ』
声がした。しかし、まぶたは重く、眠たい。私はその声を無視する。
『早く起きろ。君は目覚めなければならない。心の奥底ではそう望んでいるはずだ』
ふいに体にずしんと重力がかかる。私の目は強引に開かれた。そこはまるで海の底のような果てしない広い空間だった。
「……ここは?」
『ようやく目覚めたな。祝福されし子よ。私は君を待っていた』
「……えっ」
(これは、夢?私は死んだはずじゃ……)
『そうだ。君は確かに死んだ。だが、私が死体から魂を抜き取り、新たに構築した体に入れ込んだのだ』
「どうして?未練なんてないのに」
『それは違う。私は君の心からの願いを聞いた。だから蘇らせたのだ』
意味が分からない。だが、状況をまとめると私は生き返ったらしい。私の「心からの願い」のために──
「私の願いって?」
『それは言えないな。自分のことじゃないか。分かるはずだ』
「でも……」
『君は文句が多いな。祝福されし子よ。キミが願い、私がそれを叶えた。それだけ理解しておけばいい』
声の主はしばらく黙った。何かを考えているようだった。私も黙っていた。こんな理不尽な状況には慣れている。
『君には新しい世界で生きてもらう。あまりにも悲惨な人生だったからな。そしてぜひそこで願いを叶えて欲しい』
「新しい世界……?」
『そうだ。魔法が存在する世界。君のいた世界と反対側に存在する世界だ。きっとそこにいけば君の求めているものが手に入るはずだ。期待しているぞ』
その瞬間、辺りが光に包まれる。意識が遠のいていくのが感じられた。
「待って……!私はまだ……」
『人を信じ、自分を信じる。今度は出来るといいな。祝福されし子よ、君は神に愛されている。どうかそれを忘れないでくれ』
そうして、私の意識は完全に途絶えてしまった。
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