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カチャと金属が重なる音がした。それと同時に体の機能が働き始め、肌に布の感触がした。
起きなければならない。重いまぶたを開ける。そこには見慣れぬ天井があった。いつものように薄汚れた天井ではない。しかも、いてもなら布団を被って寝るなんてしていなかった。
(そっか。私、死んで蘇ったんだっけ)
意味不明なことを自分自身に納得させるように起き上がる。あれが現実で、あの声の主が言っていたことが本当であるならば、ここは魔法が存在する世界なはずだ。
「おはよう。目を覚ましてくれて良かった」
「っ?!」
突然、声がした。驚いて横を見ると白髪の青年が椅子に座っていた。机の上には食事が置いてある。先程の金属の音はこれだったみたいだ。
白髪の男は夜空のような澄んだ深い青い瞳をしていた。鼻は高く、薄いくちびるが特徴の整った顔をしていた。義妹がこのような男をよく引き連れていたことを思い出す。いや、この青年の方が綺麗かもしれない。
「覚えているかな。君は路地裏で倒れていたんだ。心配だったから僕が泊まっていた宿に連れてきたんだけど……」
「路地裏……倒れてた……?」
「うん。傷だらけでね。一体どうして倒れていたの?」
「それは……」
答えるべきだろうか。「一度死んで生き返らせてもらったんです」と言うべきだろうか。もしそうなら私の過去も話す必要があるかもしれない。
(それだけは嫌だ)
「言いたく、ないです」
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