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「そっか。それなら仕方ないね」
「っ?!」
青年は簡単に了解してくれた。あまりにもあっさりしていたため驚いてしまう。青年は私の顔を見て優しく笑った。
「誰だって人に言いたくないことはあるからね。無理には聞かないよ」
(この人は、どうして……)
私は明らかに怪しい人間なはずだ。路地裏で倒れていて、自分のことを話したがらない、おかしな人間のはずだ。この青年はどうして私を受け入れようとするのだろう。
「どうして……」
ギュルルル……
その時、私のお腹が鳴った。当たり前だ。死ぬ時も空腹で死んだのだから。青年の動きが止まる。そしてそれからふるふると震えて……
「ははは!お腹すいたんだね。一緒に朝食を食べようか」
と楽しそうに笑った。何も言えない。
「おいで」
彼は手招く。さすがに体の欲求には逆らえず、私はベッドから降りた。しかし足に力が入らずよろめいてしまう。すると再び体が無重力感に包まれた。
「?!」
「危ないなぁ。やっぱりたくさん食べないといけないね」
「こ、これ、なんで……」
「え?なんでって魔法だろう?あぁ、言ってなかったね。僕は魔導師なんだよ。驚かせてしまったかな」
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