1〈アヒルの子は拾われる〉

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 私の体はふわふわと浮いており、青年の手の動きに合わせて動き出す。そしてそのまま彼の向かいの椅子に座らされた。  これが「魔法」。私のいた世界にはなかったものだ。やはり声の主が言っていたことは本当のことのようだ。 「さぁ、お食べ。そして元気をつけなきゃね」  青年に勧められるがまま、パンに手を伸ばす。固くない、温かく柔らかなパンだった。これまで食べた何よりも美味しく感じられた。  食べ終わり、部屋の中には静かな空気が流れる。元々、私は話すのが得意な方ではない。青年は私をにこにこと見つめているだけだし…… (今が聞くチャンスなのかも) 「どうして、こんなに優しくしてくれるんですか」  私は聞く。見ず知らずの人間を拾い、ご飯まで与えた。理由がわからない。彼の行動が理解できない。 「私なんかを助けても何もメリットなんてありません」  この世界で私は一番無力な存在だ。魔法も使えないし、何も知らない。彼にしてあげられることなんて何も無い。  青年は変わらず笑ったままだった。
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