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「ここは教会。孤児院があるんだ。今日は掃除を手伝おうと思ってね。こういう時に魔導師は役に立つんだよ」
フードを深く被り、イーリスの後について行く。教会の中に入ると、初老とシスターが出迎えてくれた。
「イーリス様、わざわざありがとうございます。貴方がいらっしゃると聞いて子供たちも喜んでおりますよ」
「そうか。それは嬉しいね」
「ところでそちらの方は……?」
「僕の連れだ。名前は……」
イーリスがこちらを見る。私は小さく首を横に振った。それを見て彼は「はは」と乾いた笑みをこぼす。
「ノラという。助手として連れてきたんだ」
「あらまぁ、ノラ様ですか。美しい名前ですね」
「だろう?」
シスターが褒めるとイーリスは満足気に言う。どうやら彼が勝手に名前を決めたようだ。私が教えなかったのだから仕方がない。
(だからって野良なんて付けなくても……)
シスターは私の手を握る。思わずビクッとしてしまったが、彼女の手は柔らかく、しわくちゃだった。どうにも振り払うには弱々しく感じる。
「ノラというのは光という意味ですからね。きっと我らの主神ラウルス様から祝福されていることでしょう。今日は来てくださって本当に感謝しています」
「……はぁ」
この国では「ノラ」というのは「光」という意味があるらしい。イーリスも粋な名前を付けたものだ。
「それじゃあ行こうか。掃除は早く終わらせるに尽きる」
「えぇ、えぇ。ではこちらへ」
そんなこんなで、イーリスの求める見返り──掃除が始まった。
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