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イーリスは魔法で水を操った。それで普通なら手の届かない場所の汚れを落としているのだ。それが終われば風を操り、乾かしている。魔法とはなんでもありなようだ。
私には特に出来そうなことはなかったので、洗濯物を手伝うことにした。魔法があるため機械が発展していないのだろう。すべて手洗いでしていると聞いた。
水場には孤児院にいる子供たちと若いシスターが一人いた。
「……お手伝いします」
「ありがとう。助かるわ!えっと……イーリス様のお連れのノラさんよね。私はマギー。よろしく」
「はい」
「そこの洗濯物、干してくれると助かるわ」
マギーが指した方を見ると、二つの棒が立っており、間に紐があった。あそこに洗濯物を干すのだろう。言われた通り、シワがつかないように洗濯物を干す。
子供たちは楽しそうに桶に入った洗濯物を足で踏んでいた。ここは教会で孤児院。この子供たちは親に捨てられた、あるいは独りになった子供たちなはずだ。
(なのに、幸せそうなのはどうして?)
あんなに小さな子供たちが独りでも新しい居場所を見つけ、生きている。私とは全然違う。
「お姉さんの髪、黒いんだね!」
「えっ」
「あ!おめめも真っ黒だ〜!不思議〜」
足元に少女が立っていた。風に吹かれてフードが取れてしまったようだ。私は慌ててフードを被り直す。
「黒いの、初めて見た!」
「……そう」
「うん!皆は黒い人は怖い人だって言ってたけど、違うね!お姉さん、優しい人だもん」
「優しい人?私が?」
聞き返すと少女は満面の笑みで「うん!」と頷き返す。
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