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プロローグ
私は旦那様と使用人との間に生まれたいらない子だった。高潔な血に放り込まれた「みにくいアヒルの子」。誰からも望まれていない子。
母が死んだ後は、お屋敷に私の居場所なんて完全に無くなっていた。
無関心を装う父親に、邪険に扱うお屋敷の人々。そして──私を執拗にいじめてくる義妹。彼女はまさに「白鳥」だった。美しく、きらびやかに愛された少女。私とは真逆の望まれた子だった。
「お姉様って本当に可哀想。産まれてくる理由なんてあったのかしら。どうせならあの卑しい母親と一緒に死んどけばよかったのにね」
そう言われてもなんとも思わなかった。自分がいらない子だということは納得していたし、私も必要もされようとは思っていなかったからだ。
「……そう」
私の反応に義妹はいつも不機嫌な顔をする。そして暴力を振るうのだ。平手打ちや、嫌がらせ。ご飯を抜かれたこともあった。
そしてそんな私の苦悩を分かってくれる人は誰もいなかった。学校に行っても、
「本当の娘じゃないくせに偉そうに」
「あのアザ、可哀想アピール?」
と言われるだけ。どこにも私の居場所はなかった。
そんな私に、神様は同情したのだろう。ある日、義妹の嫌がらせにより空腹で階段を降りていた時──
「っ!」
足を滑らせ、落ちたのだった。
私は白鳥になんてなれないまま呆気なく死んでいくのだ。
──みにくいアヒルの子のままで……
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