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その後、同僚たちはさらに盛り上がり、祝福の続きは終業後の居酒屋で、ということになった。何かあれば酒の席をもうけるのが好きな同僚たち。一杯やらずにはいられない性分らしい。
「尾原ちゃん、ほんと、おめでとう! そして、尾原の息子の金メダルを祝して、乾杯!」
盛り上げ役の村本がビールジョッキを片手に音頭を取る。それぞれの手に握られたジョッキがぶつかり、軽快な音をたてた。それぞれの口に運ばれたジョッキは、瞬く間に空っぽになった。
「尾原を見てると、俺も早く結婚したくなるよ」
村本が二杯目のビールを注文しながら尾原に声をかけた。「奥さんとはどこで出会ったんだい?」
「俺って競馬が趣味だろ。だから週末にはいつも競馬場に足を運んでてさぁ。そこで偶然出会ったんだよ。まぁ、ひと目惚れってやつかな」
「うらやましい限りだなぁ」
「多様性のおかげだよ」
「確かに、尾原ってモテるタイプじゃなかったもんなぁ。あっ、失礼、悪い意味じゃないぜ」
二杯目のビールが運ばれてこないことに気づいた村本は、大声を張り上げ店員を呼び止めた。
隙きを見て、尾原は島崎に話しかけた。
「あくまで息子の手柄だからなぁ。俺は別にたいしたことしてないし」
「まぁ、君の結婚がすべての始まりだろ? 今の奥さんを選んだことが、君の偉業だよ」
「そう言われれば、そうか」
酒に弱い尾原は、既に赤くなった頬で照れ笑いした。
「そう言えば――君の子供の症状、心配だな」
「あぁ、昼間の話か。別に心配ないよ。予想してたことだから」
「症状なんて予想できるものなのかい?」
「簡単なことさ。君の息子は誰よりも走るのが早い。そりゃ当然のことさ。あらゆる多様性が認められたことで、君は今の奥さん――つまりは、牝馬と結婚し、子供を授かったわけじゃないか」
「まぁな。でも、それと君の息子の症状――目のクマとどんな関係が?」
島崎はジョッキに残ったビールを一気に飲み干した。
「あれはクマじゃないんだよ。君も俺の結婚式に来てくれただろ?」
「そうか! 君の奥さんは、パンダだったな」
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