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マリエラ嬢の口から「死」という言葉が出る。それはとても奇妙なように思えた。彼女の肉体は健康そのもので、どんな病魔も敵わない。死神ですらその溢れんばかりの生命力に首を垂れるように感じたからだ。
「修道士さま。わたくしは恵まれないすべての人々のために祈りたいのです」
彼女がそう言って私の目を見据えたとき、私は圧倒されていた。
マリエラ・カザリーニは魅力的な容姿を持っているだけでなく、知性にも恵まれている。彼女は自分が欺かれることも、利用されることも決して許さない。
この政略結婚が覚醒の機になったのだろうか。私は彼女のその生存本能ともいうべき気迫に圧倒されていたのだった。
下手な小細工はきっと見抜かれる。私は単刀直入に訊ねることにした。
「以前のあなたは敬虔な信徒ではなかったと聞きました。日々の礼拝すら疎かにされていたとか」
「ええ」
「それがなぜ、突然修道女を志そうと思ったのです?」
こうした指摘も予期していたのだろう。案の定、彼女は余裕を見せた。
「父から婚約のことを聞いて、わたくしの心は大きく搔き乱されました。なんとか落ち着きを取り戻したい。このこと、つまり自分の将来ときちんと向き合いたいと考えたとき、わたくしには縋れる者が誰もいなかったのです」
家族にも打ち明けられない。使用人にも醜聞を立てるわけにはいかない。そうして思いつめた彼女の足は自然と教会へと向かっていたと言う。
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