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3.妊娠
そんな日々がいくらか過ぎた頃だった。
マリエラ嬢の病室でちょっとした事件が起きたそうだ。
「事件?」
私がそれを知らされたのは、その「事件」が起きた三日後のこと。
ルカレッリ医師は気まずそうに視線を泳がせながら頷いた。
「こうなると思わなくて。隣室から苦情が出るほどでしたが……まあ、自然な行いですから。まだ若い娘さんですし」
私は顔が熱くなるのを感じた。が、既に彼の失礼な憶測や言動を咎める段階は過ぎていた。
「ありえませんよ。妊娠してから臨月に至るまで、九ヶ月は掛かるはずです。元々恋人と、その、関係を持っていたと考えるのが自然でしょう」
ルカレッリは厳しい表情で首を振った。
「ありえないと言うならば、現状のすべてがありえないんですよ? たった二日であんな風に腹が膨れ上がるなんてことは」
信じられないことだった。
今や、マリエラ嬢の腹部は臨月の妊婦のように大きく膨れ上がっている。それまでそんな兆候は一切見られなかったのにも拘わらず。
マリエラ嬢はこの二日間、腹が膨れる痛みに転げ回っていた。
その直前の夜、彼女の病室から大きな嬌声が響いていたと他の患者から苦情が出ていたそうだ。当然ながら、施錠された個室に外から入れる者はおらず、また公爵令嬢の非常に個人的な行いであるため、このことが取り上げられることはなかったのだが。
「事情が変わりました。三日前というと、ちょうどマリエラ嬢の腹が膨れ始めた時期と一致します。何らかの関係があると見るべきでしょうね」
ルカレッリは淡々と述べたが、私には理解できなかった。
「ますますもっておかしくなりますよ! たとえ、誰かがマリエラ嬢の部屋に侵入したり、または逢引が行われていたとします。それでも絶対にありえない――」
「考えられる原因が一つだけあります」
私は目の前に突き付けられた手の平を見下ろした。
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