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5.赤子
嗚呼、主よ。
マリエラ嬢があの晩契りを交わしてしまったのは、一体何者だったのでしょう?
ルカレッリ医師はこの件を闇に葬った。他ならぬカザリーニ侯爵がそう望んだのだという。
侯爵はルカレッリが治療に失敗したのだと責め立てたが、娘の姿を見て以来何も言わなくなってしまった。
いや、むしろ。
その灰色の赤子を、孫として大切に育て始めた。
カザリーニ家がおかしくなってしまったのは誰の目にも明らかであった。マリエラ嬢だけでない。侯爵も、夫人も、兄妹たちも、皆。新たに一家の一員として加わった灰色の肉の塊を手放しに受け入れたのだ。
婚約は破棄され、使用人たちが屋敷を離れてからは、カザリーニ家は急速に落ちぶれていった。
その最期は狂乱ののち、全員が死体となって幕を閉じた。その現場はあまりに猟奇的で、発見された死体はどれが誰のものともわからないほど、細かく切断されていたという。
その中で、唯一。
マリエラ嬢だけが元の彼女に近い姿を留めていた。
彼女は空っぽのおくるみを抱いたまま、ベッドの上に腰掛けていた。その死体からは心臓と薬指だけが失くなっていたという。
まるで食い千切られたような歯形を残して。
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