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2.マリエラ嬢
正直に白状しよう。
マリエラ・カテリーナ・カザリーニ嬢を一目見た時、私は女性というものが如何に美しく、官能的な存在であったかを思い出した。修道院の門をくぐってから今日まで女性と接する機会はないに等しかったし、唯一の接点である聖バシリオ精神病棟の患者たちはあくまで患者として見ている。
しかし、彼女は違った。
質素な装いに身を包み、牢獄のような病棟の個室に居を移してもなお、彼女が持つ美しさを失ってはいなかった。
緩く肩に流した栗色の髪。熟れて弾けそうな赤い唇に対照的な白い肌。滑らかな肢体。布の上からでもわかってしまうその豊かな曲線に、手放そうと努めていた私の中の男性的な部分すら存在を自覚してしまいそうになる。
だが同時に、私は彼女の目を見て悟っていた。
ルカレッリ医師が疑念を抱いたその理由――彼女の鳶色の瞳には、人を騙し騙されんと警戒する油断のなさがありありと顕れていた。
「ごきげんよう、修道士さま」
マリエラ嬢は隅のベッドで壁に向かって頭を垂れていた。そこには彼女が持ち込んだ十字架が打ち付けられている。
「わたくしを説得しにいらしたのでしょう? 生憎と、わたくしはもう心を決めました――わたくしの生涯をイエスさまに捧げると」
そう言って彼女はベッドの上に脚を投げ出したまま、身を捻るようにこちらを振り返った。悪戯っぽい笑みを口元に浮かべて。
「だから無駄でしてよ。修道院の生活が如何に厳しくつらいものか説いても、わたくしには効きませんわ」
私は見惚れたことを悟られないよう首を振りながら、用意された丸椅子に向かって歩み寄った。
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