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「私はそのために伺ったのではありません。私はただ、あなたの話に耳を傾けるために呼ばれました」
マリエラ嬢は意外そうに目を開いた。その目には好奇と警戒の両方が浮かんでいる。
「あら、わたくしの話を?」
「はい。どんなことでも、話してください」
私は腰を下ろし、じっくりと聴く姿勢を取った。
マリエラ嬢は少し考える素振りを見せたが、結局私と向き合うようベッドの上で座り直した。
「お話できることが思いつきませんわ」
「では、あなたのご家族の話はどうです? ご両親の話、兄君の話……それから、歳の離れた妹君がおられるのでしたね」
「ええ、おりますわ。二人」
私は微笑んで首を傾げた。
「妹君は可愛いですか? 私には兄しかいなかったもので、下の弟妹というのが想像つかないのです」
ところが、マリエラ嬢は私のことを穴が開くほど見つめたあと、フッと皮肉染みた笑みを浮かべた。
「回りくどいことはおやめになって」
蠱惑的なその笑みに。
私は咄嗟に唾を呑んだ。
「あなたはわたくしに兄妹のことを思い出させて、家族愛を説こうとされるのね。それも無駄ですわ、修道士さま。わたくしの愛は主イエス・キリストに――主の愛を通して、すべての人々へと向けられているんですもの」
彼女は目を伏せて付け足した。
「確かに、おっしゃりたいこともわかります。カザリーニ家の未来がわたくしの結婚に懸かっている……でもね。わたくしがこの結婚に応じなくても、妹たちは死にませんわ。家族の誰も。けれど、屋敷の外では日々死の恐怖と寄り添って生きている人々がいる」
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