ひきだしのリコ

1.

　深い海のように彩やかな瑠璃色のマグカップで、淹れたてのコーヒーを飲む。そして、それを木製のコースターの上に置き、ノートパソコンの電源を入れる。こだわりにこだわり抜いた新品のパソコンデスクは僕のお気に入りだ。

　在宅勤務に切り替わってから約１年と半年。はじめの頃は不慣れだった働き方も、今となっては日常的に感じる。今週もまた平日という日々との長い闘いが始まろうとしていたが、今朝の僕はいつになく上機嫌だった。

　日曜日、僕は気分転換のつもりで人気大型家具店「ノトリ」に買い物に出かけた。無性にパソコンデスクが欲しくなったのだ。

　もしかしたら仕事と生活の空間を分けたくなったのかもしれない。いままでは食事もゲームも仕事も、すべてリビングの丸テーブルで済ませてきた。

　僕は悩みに悩んだ挙げ句、ダークブラウンでシックにきまった木製のパソコンデスクを購入した。幅は１２０ｃｍくらい。袖机は無く、足が思いっきり広げられるタイプ。幅一面の大きなひきだしがついていて、色んなものが入れられそう。椅子は、ベージュ色の布でカバーされた４本足のタイプを選んだ。

　ついでに瑠璃色のマグカップと木製のコースターをカゴに入れて、お会計。ボーナスで潤った僕の財布には痛くも痒くもなく、「キャッシュで」という決め台詞が店内に轟いたことは記憶に新しい。