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 朝礼が終わり、ビデオチャットから退出していく営業2課のメンバーたち。ほんの数秒で僕とマリさん2人だけの空間が作られた。どうしよう、少し緊張する。リコちゃんがあんなこと言うからだ。 「モトキさん、ごめんなさい」 「どうしたんですか?」 「わたし、ずっと考えていたの」 「……?」 「こんなこと、朝から変よね。わたしも変だと思う。でも、なんでだろう。いま伝えないと、ダメな気がして。このままじゃ仕事に集中できなくて」 「なんでも言ってください。大丈夫、僕がそばにいます」 「ありがとう、じゃあ」 「はい」 「……結婚してほしいの、わたしと」  ──唐突なプロポーズ?!  前もってリコちゃんからは聞いてはいたけれど、にわかに信じがたい状況。というか、信じてすらいなかったけれど……それにしても、あまりに唐突だ!  こんな告白ってあるものなのだろうか。リコちゃんも言っていたように、たしかにマリさんは少し不思議な一面もある。だけど、さすがにこのタイミングでプロポーズは……。 「ダメ、かな」 「だ、ダメなんかじゃない」 「じゃあ」 「もちろん、よろ……」  ────違う、ダメだ!!  リコちゃんと約束したんだ。一旦は断るんだった。2年待つ、民法改正を待つんだ。そうじゃないと、リコちゃんの人生を守れない。を誕生させるわけにはいかないんだ! 「ごめん、マリさん!」 「え……?」 「もう少しだけ、考えさせてほしい」 「もう、少し……?」 「ああ、ちょっと気持ちを整理させてほしいんだ」 「そう、よね。……ははは、当然よね。こんな朝から逆プロポーズなんてされても、困るわよね。わたしったらどうしちゃったんだろ。ふふ、ごめんなさいね」 「いや、僕のほうこそ、なんだかごめん」 「いいの、信じているから」 「うん、ありがとう」 「じゃあね、商談行ってくる」 「ああ、頑張って」  僕らはそうして、お互いに手を振り合い、静かにビデオチャットから退出した。  ……これでよかったんだ。  僕たちの関係はこれからも変わらない。いつか民法が改正されたときには、今度は僕の方から告白しよう。マリさんとリコちゃんは僕が守るんだ。しっかりとした男になって、ふたりを迎えに行こう。  そう、堅く心に誓った……。  ────その時だった。
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