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2.
時刻は8時40分、少し早いがそろそろ準備をしておこう。僕はデスクトップにあるビデオチャットツールのアイコンをダブルクリックし、朝礼に参加する用意をする。
僕の職場は小さな文具メーカー。今年で入社10年目になる。僕が所属する営業2課は、チームワークを大切にする部署で、在宅勤務に切り替わっても毎朝の朝礼は欠かさない。課長の緒方マリさんのアイデアだった。
ここだけの話だが、僕はマリさんと、清らかなお付き合いをさせてもらっている。会社にはまだ内緒で、2課のメンバーでさえ知らないトップシークレットだ。
きっかけは3年前の雨の日。傘を忘れて駅前で困り顔のマリさんと偶然出会い、僕の傘で一緒に保育園のお迎えに行った日のことだった。
マリさんはシングルマザーで、娘のリコちゃんと一緒に暮らしている。初めて出会った頃のリコちゃんは、まだ2歳。来年から小学生だなんて信じられない。
家が近所だったこともあり、よく遊ぶようになった。リコちゃんは言葉をたくさん話せるようになってきた頃で、夢中でおしゃべりをしてくれたのを覚えている。
若くして旦那さんを亡くしたマリさんも、そんな僕を徐々に頼ってくれるようになった。僕は、大人っぽいけど、少しおとぼけな一面もあるマリさんが大好きだったし、やんちゃできらきらとした笑顔がよく似合うリコちゃんも大好きだ。
当然ながら、旦那さんの代わりになんてなれない。だけど、僕という存在が少しでも彼女たちの心の支えになれば……僕は、それでいいと思っている。旦那さんという大切な存在を忘れず、一緒に生きていく。
もし、それが叶うのなら。
──それだけで、十分に幸せなことだ。
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