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「あの……」 「あー、ちょっとごめん! 時間ないんだ。色々気になるだろうけど、割愛させて」 「え、いや」 「なんていうか、タイムパラドックスのインターフェアレンス的な? あまり長居してしまうとパラレルにブランチしちゃって、元のチャンネルにリスポーンできなくなっちゃうからさ。アジャイルなソリューションがミッションなんだよね」  僕は、女の子の言葉を半分も理解することができなかった。こんなにたくさんの横文字を使うのは、なんちゃってコンサルタントかIT系ベンチャーの社員かルー大柴くらいだ。 「君は、誰だい?」 「あたし? リコだよ」 「そうかい、リコちゃん。悪いんだけど、もうすぐで仕事が始まるんだ。君がどうやってこのひきだしの中に入って、いま出てきたのかは知らないけれど、僕の家からは出ていってもらえないかな。そうじゃないと仕事が始められないんだ」  気が動転していたあまり、僕は様々な疑問や前提をどこかに置いてきぼりにしてしまった。そしてその結果、意外にも冷静なコメントが口から出ていた。 「お、そっか! じゃあ丁度いいタイミングだ」 「タイミング?」 「まだママと話してないんだよね?」 「ママ?」 「ねえ……パパったら、オウムじゃないんだからちゃんと会話してよ」  女の子は、唇をとんがらして少しむくれた表情をした。勝手に人の部屋にあがりこんでおいて、なんともふてぶてしい態度……随分と身勝手な女の子である。
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