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4.
「あの……」
「あー、ちょっとごめん! 時間ないんだ。色々気になるだろうけど、割愛させて」
「え、いや」
「なんていうか、タイムパラドックスのインターフェアレンス的な? あまり長居してしまうとパラレルにブランチしちゃって、元のチャンネルにリスポーンできなくなっちゃうからさ。アジャイルなソリューションがミッションなんだよね」
僕は、女の子の言葉を半分も理解することができなかった。こんなにたくさんの横文字を使うのは、なんちゃってコンサルタントかIT系ベンチャーの社員かルー大柴くらいだ。
「君は、誰だい?」
「あたし? リコだよ」
「そうかい、リコちゃん。悪いんだけど、もうすぐで仕事が始まるんだ。君がどうやってこのひきだしの中に入って、いま出てきたのかは知らないけれど、僕の家からは出ていってもらえないかな。そうじゃないと仕事が始められないんだ」
気が動転していたあまり、僕は様々な疑問や前提をどこかに置いてきぼりにしてしまった。そしてその結果、意外にも冷静なコメントが口から出ていた。
「お、そっか! じゃあ丁度いいタイミングだ」
「タイミング?」
「まだママと話してないんだよね?」
「ママ?」
「ねえ……パパったら、オウムじゃないんだからちゃんと会話してよ」
女の子は、唇をとんがらして少しむくれた表情をした。勝手に人の部屋にあがりこんでおいて、なんともふてぶてしい態度……随分と身勝手な女の子である。
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