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 なんということだ。彼女の言うことをにわかに信じるわけにはいかないが、もし仮に真実なのだとすれば、とんでもないことだ。  マリさんからプロポーズ……?!  ついに、結婚だなんて。  ……いやいや、まだ心の準備ができていない。  でも、断る理由なんて一つもない。 「ねえパパ、なにぶつぶつ言ってるの」 「君、それは本当のことかい?」 「当たり前じゃん、あたし未来から来てるんだから」 「なんてことだ」 「断ってよ」 「え、なんで?」  先程から彼女は何を言っているんだ。マリさんと結婚できるだなんて、最高じゃないか。これ以上の幸せ、この世の中に存在するはずがない。 「パパとママが結婚したせいで、あたしの人生が台無しなんだよね」 「なんだって?」 「だから、最低になるのよ。あたしの人生」 「そんなはずはない、僕は君もマリさんも大切にする」 「あ、そういうことじゃないから」 「そういうこと?」 「どちらかというと、それ以前のこと?」 「以前?」 「あー、もう理解が遅くてイライラするなあ」  目の前で仁王立ちするリコちゃんは、先程よりも露骨に不機嫌な表情を浮かべている。  僕がいったい、何をしたっていうんだろう。
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