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9.
僕は急いで席に戻り、ビデオチャットのスタートボタンをクリックする。まだあまり冷静さは取り戻せず、どこか落ち着かない気分だった。朝礼がビデオチャットでよかった。
「皆さん、おはよう」
「おはようございます」
ビデオチャット上にマリさんの顔が映り、課のメンバーたちが続々と現れる。マリさんはやはりピシッときまったグレースーツ姿。今日もかっこよくて、思わず見惚れてしまう。
「今日のわたしの予定は、11時に赤羽に向かって商談。それからは一度事務所に戻って、午後からは在宅勤務の予定。何かあったらすぐに連絡ください」
「はい」
「かしこまりました」
事務的な連絡、その日の業務予定などを共有し、朝礼が終わる。毎朝、面倒でもあるが、チームとして一体感が生まれるのも事実。マリさんなりのチームに対する気遣いだ。
「それと、伊部くんだけ朝礼後に少し打ち合わせさせて」
「え、僕ですか」
「うん、ちょっとで終わるから」
……まさか、プロポーズ?!
僕は、ひきだしから現れたリコちゃんの言葉が頭をよぎった。いやいや、まさかな。そんなはずがない。やっぱりどう考えても、このタイミングでのプロポーズはおかしい。
「承知いたしました」
「忙しいのに、ごめんね」
「いえ」
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