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地図には次々と四角がならんでいく。話し込んでいるとだんだん四角が薄暗くなり地図と見分けがつかなるほど紙面が暗くなった頃、見上げるとたくさんの星が瞬いていた。都会とは全く違う、星だらけの空。
「こんなに遅くまでここにいるのは初めてかもな」
そういえばそうだ。
ここに泊まった記憶はない。顔もよく見えなくなった幼馴染と寝転がると、葉を広げたクスノキだけが真っ黒で、それを囲むように小さな光が川のように流れていた。
「宇宙人が攻めてくるぞ」
「どの星から」
「そうだな……ええと、明るい三角の真ん中から?」
「ええと……夏の大三角形、だったかな。天の川から攻めてくるならやっぱりイルカかな」
「アマノカワイルカが攻めてくるぞ」
ぷっと思わず息が漏れる。
小学生の林間学校の天体観測で見たのと変わらない空。
今度はこのクスノキじゃなくて町全体を秘密基地にする。この町を民間ロケットの発射場にする。ここは山に囲まれていて近くに村や町はない。だから万一ロケットが落下しても人的被害がない。
俺らは結局夢と現実の区別がつかないまま大学で物理学や機械工学を学んで宇宙人と戦うことにした。工事はおそらく今年いっぱいかかって、来年の夏にはあの天の川を目指してロケットを飛ばす。
飛ばすのは昼だから秘密基地から見る宇宙は黒かったりはしないのだろうけど。
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