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『大きくなったらね、パパみたいな人と結婚するの♡』
僕の人生はほぼ順風満帆だった。
運動神経抜群、頭脳明晰。小さな頃から神童と謳われ、高校生の頃はサッカー部キャプテンと生徒会長を兼任した。
ストレートで一流大学に合格し、大企業に就職。社内でも異例の速さで出世し、若くして部長にまで上り詰めた。
その一方で子宝にはなかなか恵まず、歯痒い思いをしていた。子どもは絶対に欲しいと僕は思っていたからね。検査の結果、原因があったのは妻の方で僕ではない。もちろん妻を責めることはせず、二人で頑張ろうと誓いあった。
それでも授かるのは難しく「もう不妊治療はやめようと」と諦めていたところで授かったのが、一人娘の『宝乃香(ホノカ)』だ。名前を見ればわかる通り、この子は僕の宝。目に入れても痛くない。
僕は、ホノカのためになんでもしてやった。国内外問わず旅行に連れていき、さまざまな物を見聞きさせ、経験させた。一流の家庭教師をつけ、勉学のサポートをした。ほしいと言ったものはなんでも買い与えた。
ホノカは僕のお姫様だ。
「ホノカ、大きくなったらパパと結婚するー!」
ホノカが初めてこの言葉を口にしたとき、こんなにも僕の顔は緩むことができるのか、と自分でも思ったぐらいだ。それに対して、妻がふふふっと幸せそうに笑う。
「あら〜?ほのちゃん、パパと結婚するの〜??」
「うんっ!パパ大好き!」
至高。
こんな幸せが、世の中にはあったのか。
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