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『紙の燃ゆる様』
蝋燭に紙をかざす。炎は勢い良く乗り移ると、性急に燃え上がる。
指先に熱を感じて地面に落とすと、炎は鳴りを潜める。
しかし決して消えることなく緑がかかった橙の舌で紙の縁を舐めとっていく。熱い舌に撫でられた紙は、内側へ腰を折る。炎が中心に進むにつれて、勢いは鎮まりやがて消えた。
しかし紙の苦痛は終わらない。
意志を持ったオレンジの輪が内側を焼きながら締め上げる。中心へ収斂するその直前、円から点になるその時、時間は遅延する。
紙の内で花火が散った。
スローモーションで変身したかと思うと、一瞬のうちにちりぢりになる。
後に残ったのは灰の薔薇。
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