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あの床屋の先の電柱を右に曲がってずっと行くと、誰も通った事がない古い細い道があるんだって。
中学一年の夏休みに入ったばかりで、それだけで舞い上がっていた僕にそう言ってきたのは小学生の頃からの友達の佑樹だった。
佑樹が言うには、その古道はいつもある訳では無いのだが気づいた時には普通に前からあるようなそんな感覚になる不思議な道であるということ。
うーん、何を言ってるのかよく解らない。
だけど、夏休みのギラギラとした陽射しの下ではそんな些細な事などどうでも良かった。
「今から行ってみようよ」
そう言ったのは僕の方だった。
「え、いきなり?」
佑樹は目を丸くした。元々丸いほうの目だったが、それを更に丸くしていた。
佑樹は、大袈裟に手振りしながら今から行っても本当に古道があるかどうか分からないし、半ズボンだから虫に刺されたりするのも嫌だからまた今度にしようと言ったが、それを確かめに行くのが面白いんじゃないかという僕の意見に嫌々ながらも流されて、二人は自転車を漕ぎ出した。
嫌々だったが行くと決まればもう心は踊り始める。あそこの自販機でジュースを買って行こうかなどと、気持ちは早くも冒険に変わっていた。
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