花とシロ

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生涯・・・・・・ 人の生涯などは壊れやすいと 戦争は花に教えてくれた。 戦争など無ければ 二人の兄は戦死することはなかったし、 それを嘆いた祖父母が 死期を早めるほど 衰えることもなかった、はず。 なんとか踏ん張った両親と 幼い妹達を大人にした頃には 花は婚期を過ぎていた。 それでも縁談がなかったわけでも ないのだけれど、 生まれ育った家を出る程、 “想えるひと”もなかっただけ。 やがて妹達も嫁いで 両親と三人になったが いつの頃からか・・・ 畑の作業小屋に居着いた猫が 代々と命を引き継いで  「可愛いもんだわ」 家族の心の慰めに・・・。  「なんでだろうね?   黒や(まだら)が多いのに   いつも必ず真っ白の()が   生まれるねぇ」 真っ白の猫は代々“シロ”の 名を継いで、土間で家事をする花の 足許に身体を寄せていた。
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