第11話. 涙の無駄遣い

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 え?  Aさんから送信された文字の意味が、理解できない。     まゆちぇ 「え?いなくなった…?」  Aさんから容赦なく送信される酷なメッセージは、私の心に深く突き刺さった。  A「死にました。せいせいしてます今は」  まゆちぇ  「いつ?」  A「6/21に。和歌山で」  まゆちぇ 「詳しいこと聞いても大丈夫?なにがどうしたの」    A「自殺ですね」           このときばかりは、スマホを持つ手が震えた。  「自殺」という単語は、私の心に深い傷を残している。   そしてそれは月日が経った今もまだ癒えていないということを、今この瞬間改めて認識してしまった。  ドクドクと波打つ心臓の音を静めて、ハッと我に返り、返信する。  ま「どうして......」  A「“しね”って遺書を残して死にました。  シャブ中だったので朦朧として飛んだんでしょ。  三段壁っていう自殺の名所です」    ……どうしてそんなことを冷静に言えるの。  ううん、本当は強がってるだけだ。  だから、私も冷静にならなきゃだめ。  ま「Aちゃん。平気?」    A「はい。平気です!!!せいせいしてます」      ま「うん…お母さん、遺書はAちゃんに宛てたんじゃないと思う」      精一杯かけてあげられる言葉がこれだ。  Aちゃんより何年長く生きているんだ私は………。       次の瞬間、なにかの画像がポン、と送られてきた。  一瞬、なんの画像だか把握できなかったが、よく目を凝らして見ると。  緑の草木らしき上に添えられた赤い花束の写真だった。
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