第11話. 涙の無駄遣い

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 こんなに辛い出来事に直面したのに、約1ヶ月半も、1人で耐えていたAさんの強さにまた心打たれていた私。    そしてそれを私に一番に打ち明けてくれた。        心を開いてくれている。  不謹慎かもしれないが、とても嬉しかった。  Aさんに寄り添ってあげられるのは、私しかいない。  支えてあげようと思った。  力になりたいと思った。     家族の死といえば、お祖母ちゃんしか経験していない私ですら、あのお葬式の日のことは記憶に刻み込まれている。     まだたった3歳の頃だったけれど、大人になった今はお祖母ちゃんの最期の寝顔を思い出して泣きたくなるときもある。    それくらい、家族の死というものは残酷なんだ。     それが「自殺」という形で最期を終えたAさんのお母さん。    Aさんは、お母さんのお葬式に出れなかったんだ。  ―――自殺は、かなしい。            例え家族じゃなくても。    残されたほうは、立ち直るまで葛藤を繰り返し、限りない時間を要する。  10年前――自分が経験しているからこそ、Aさんの哀しみが痛いほど解る。  本人が自ら望んだわけじゃないのに「自殺」という扱いになるケース……    行き場のない気持ちに共感せずにはいられなかった。
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