第11話. 涙の無駄遣い

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  一方的にメッセージを送り続けたある日、いつもは既読になるだけなのに、Aさんから返信がきて、詳細を知ることになった。 「まゆちゃん、誹謗中傷されてる。  死ね、とか、虚言癖、とかメッセージが送られてくる…」  ―――お母さんの死から一変、Aさんが突如「誹謗中傷されてる」と訴えてきた。   「誰に?」 「わからない。捨てアカで7人の人から…」  ――7人?え?7人?  いくらアンチが多いAさんでも、一気に7人に攻撃されるもの?  だって、Aさんのブログは明らかに更新頻度が落ちたし、ランキングなんてランクインしているのかすらわからない。  でも、根強いアンチは存在するんだろうな。 「そのメッセージ、スクショして保存してある?」 「捨てました。怖くて…」 「え?捨てたの?…」  捨てた?どうして?怖い?Aさんはそんなアンチのメッセージを怖がるようなヤワな女の子じゃない。……けど、お母さんが亡くなってからまだ日が浅い。  きっとまだ精神的に不安定なんだろうな。     どうすればいい、か……。  話を進めていくうちに、Aさんは 「勇気を出して誹謗中傷をやめてほしい、と記事に書きたい、でも直接的なことを書くのは怖い」と話し始めた。 「まゆちゃん、私今苦しんでいる人に自分の想いを伝えたい。そうすれば誹謗中傷している人もわかってくれると思う」    そして、それを私に「拡散」してほしい、と。  「拡散希望」というワードは、私にとってトラウマになっていた。     だけど、AさんはKさんのようにデマを拡散希望するわけではない。間違ったことをしようとしているわけではない。  それに、Aさんの口から重要な事実を聞いてしまった。 「犯人はおそらくJさんだと思います」 と。
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