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頬をかきながら「あ…」と小さな声を漏らす。
「あ…って何よ。他に何か言うことあるでしょうが」
「そっか~。だからか…。明日で十七になるんだな。なんか少し老けたなって思ったんだよな。最近、なんか母さんみたいにうるさいしさ」
生樹がそう言うと、美和は生樹の制服の襟を掴んで、
「あんたがそんなんだからでしょうが!」と前後に激しく揺する。
「分かった分かった! 冗談だって!」
怒る美和の手を離して、美和から離れると、
「そんなことはどうでもいいのよ! あんたは私の誕生日をどうしても祝わないといけない役目があるの!」と生樹に指をさして叫んだ。
「どんな役目だよ。彼女でもないのになんで俺がそこまでしないといけないんだ?」
めんどくさそうに生樹は美和を見ると、
「それは…」
と唇をかみしめて、美和は俯いてしまった。
「ごめん…。言い過ぎた…」
「ううん…気にしないで…。私も少し強引だったと思うから…」
しばらく二人の間に沈黙が流れ、最初にその沈黙を破ったのは美和だった。
「ねえ…生樹…。たまにはどこかに行こうよ…。ずっと家に籠ってるのも体に毒だよ?」
「…」
美和が優しく言うが生樹は何も返答をしなかった。
「そろそろ学校にも来てもいいんじゃない? みんな心配してるよ?」
「そんなことあるわけないだろ。みんな俺の事、人殺しだって思ってるだろ」
生樹がそう言うと、美和は生樹の右手を優しく掴んだ。
「幸太郎が死んだこと、まだ気にしてるの? あれは事故だったんだって…。あれは生樹のせいなんかじゃないから」
生樹は思い出した。
あの日、バスケの練習試合で北高に勝った日。親友だった観興寺幸太郎が自分の手によって死んだ日の事を。
「俺が…」
生樹は拳を握ると、喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
幸太郎を殺した事実は変わらないという言葉を…。
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