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レッドチーター
灼熱の日差しが照りつける高速道路を、赤い軽自動車が、またたびに酔ったチーターのように走行している。
「あっ、サービスエリアですよ。お腹も空いてきたし、寄りませんか?」
小太りの若造が、助手席の窓から腕を伸ばしながら言った。
「はっはっは!」
大根サラダのように真っ白な髪を風になびかせながら、老齢の運転手は豪快に笑う。そして。
赤い軽自動車は、サービスエリアへ入ることなく、追い越し車線を駆け抜けた。
「……も、もうすぐ、俺達の地元に着きますね、大西さん!」
自分の希望を盛大に無視した大先輩の所業に傷付きつつも、遠足へ向かう小学生のように、無邪気に振る舞う若造。
「そうじゃな! しかし、静岡から愛知って、結構遠いのぉ……」
今年で七十五歳を迎える大西が、左に急ハンドルを切りながら答えた。
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