第12話. 友情と憧れが消えた日

17/19
前へ
/43ページ
次へ
  バクバク高鳴る心臓の音。  フルフルと震える手で、Aちゃんが住んでいる地域の警察署を調べて電話した。 『こちら大阪○○警察署です』 「すみません!そちらに住んでいる友達がじ…さつしようとしているかもしれません…!」  『落ち着いてください。状況を詳しく聞かせてください』  大きく深呼吸して、警察官に事情を一から説明した。    私とAさんの関係。     Aさんの本名など私が知っている限りの情報を。  警察官は、Aさんの本名を当てに安否の確認に行ってくれるという。     電話を切ったあと、急いでグループLINEに参加すると―――Aさんが電気コードで首を締めている最中だった。   「ううぅ〜……くるし…っ、しにたいっ……」    え?    一瞬、目が点になってしまった。  だって、だって……Aさんは「電話」ではなく、「LINEのメッセージ」で自分の状況をブロ友さんに中継しているんだもの。  ……首を締めながら、スマホの文字を打てるもの……?  これ、なんのギャグなの……?  ブロ友さんは「Aちゃんやめて!早まらないで?」などとLINEの文字で励ましているが  よぉーく考えると、不自然過ぎるよ………。   私の心はシラケきっていた。   LINEのトーク画面上で   「苦しい…!!」「もうダメ…!!」「ロープが食い込んできた…!!」  そんなこと、訴えられても………………。  どこまでネットにどっぷりハマっているんだ、Aさん…………。           やっぱりというか、ほら見たというか、オチは   「ごめんね…!!やっぱりわたし、生きる!!」       …というAさんのお決まりの台詞で自殺未遂騒動(自作自演)は決着した。  メンヘラの共通の特徴。  それは、自分の都合が悪いことは記憶がなくなり、気を引くために「死ぬ死ぬ詐偽」を平然と演じきることだ。  
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加