一 日露戦争に行った曽祖父

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一 日露戦争に行った曽祖父

 私の曽祖父の若いときの写真を見たことがあります。  それはセピア色の白黒写真で、日本軍の軍服を着た若い男性が真面目な表情で前を向いた、上半身の写真でした。大きさはLサイズほど、一般的な写真の大きさです。  この写真はそっと袋に包まれて、家の仏壇に置いてありました。  私は不思議に思って、母に尋ねてみました。  聞くと、写っている若い男性は、私の母方の曽祖父ということです。  曽祖父は日露戦争に徴兵されて出征しました。そのときの写真です。ひょっとしたらこの写真が遺影になるかもしれず、そういう覚悟で撮影し、実家に置いていった写真なのでしょう。  曾祖父は明治十五年に富山に生まれました。富山を出て大阪の綿布整理工場で働いていたところ、日露戦争が始まり、二十二歳ごろに戦地に行きます。  翌年の明治三十八年には戦地での成績優秀とのことで感状、今で言う軍からの賞状を受けました。  しかし同じ年の五月に、中国の遼陽(りょうよう)にある操車場での改築中、突風で逆進する列車を救援しようとして事故にあいました。  その事故で右足を大怪我をしたので、内地に戻り兵役を免除されます。
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