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十四 遺書を書き残す
1945(昭和20)年の八月。
ついに満州へのロシアの侵攻が始まりました。
日本の軍人はもとより日本の民間人も、ロシア兵と中国兵に捕まれば殺されます。
勇とトヨは別行動で満州を去ることになりました。
トヨは他の将校の奥さんたちと逃げることになりました。
着の身着のまま、赤子のカズをかかえ、わずかな荷物と貴重品だけを少し持っての逃避行です。
すでにろくに食べ物もありません。
それでも、港にゆけば内地への引揚船に乗れるはずです。将校の奥さん二人、トヨと赤子の合計四人の苦しい旅が始まりました。
勇の方はこれから軍の命令で内地へ戻り、本土決戦するつもりでした。
いつ書いたのかは不明ですが、自分は死ぬのだろうと思い、勇は遺書を書き残しています。
その遺書は平成になってもまだ大阪の実家ににありました。処分していなければ、いまも実家にあるはずです。
私はその遺書を直接は読んでいませんが、
母から聞いた話では
「自分は死して英霊となり、靖国神社に祀られると思って欲しい」
そういった文面だそうです。
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