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十七 中国人の漁師
トヨ達四人が途方に暮れているとき。
漁師をしているある中国人の男性が、日本まで漁船で送ろうと言いました。
なぜ彼が命がけでそういうことをしてくれたのか、私には分かりません。
彼は中国人ですから、もし日本の港で捕まったら、密偵容疑をかけられるかもしれないのに。
トヨは漁師に持っている貯金の全て、百円を渡しました。(現在の金額で約五十二万円ほど)
百円といっても戦後の混乱、負けた国のお金なので、中国でお金として使えたかどうかはわかりません。
海には米軍の潜水艦がいて、船は魚雷で爆破されるそうです。
食べ物はありません。水があるのみです。
トヨ達が生き残るには、彼の船で日本海を渡るしかありませんでした。彼らは漁船に乗り、日本に向けて出発しました。
米軍の潜水艦に見つからないことを願いながら……。
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