十九 米軍の捕虜

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十九 米軍の捕虜

 命拾いしたトヨ達は、下関から各自の実家に戻ることにしました。トヨは東京の自分の実家に帰ることにします。  食べ物はなく、お金も少ししかありません。  配給制なので、店も開いていません。宿に泊まり、その日は宿の方が朝食とおにぎりを作ってくれて、それを持って出ました。   東京へ向かう列車に乗っているときです。  トヨの仲間の一人が、こう言い出しました。 「走る列車は、米軍のB29が爆破するんだって。今、この列車に爆撃が来たらどうしよう……」  トヨ達は怖がりながら列車に乗り、幸い爆撃はありませんでした。  途中でトヨ達は、米軍の捕虜に出会いました。白人の男性で、野外で大量の豆を運搬させる作業をしていました。豆の沢山ある中で、スコップで足元の豆をすくっています。  トヨが空のバケツを持って彼に近づき、黙ってバケツを彼の近くに置きました。  監視の目を盗んで、米軍捕虜の男性は、さっとスコップで豆をすくうと、別の場所に入れるふりをして、トヨのバケツに豆をいっぱい入れました。  豆を入れたバケツを持って、トヨはすぐにその場を離れます。  そして、手に入れた豆を食べ物と交換して、東京へ向かいました。
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