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その後はトヨは母と姉妹で東京の小さな家で暮らしました。
あるとき、B29が家の側を飛んでゆくのが見えたそうです。あまりにも近かったので、操縦者の姿まで見えて、トヨの姿を見ると笑って手を振ってきました。
私の祖母であるトヨは、大阪の家でその話を聞かせてくれました。九十歳の祖母は老いでうまく歩けなくなり、ベッドに座った姿勢で長く語ってくれました。
「贅沢なんてもう十分。私は十歳までに十分やったわ。もう贅沢はいらんわ」
祖母はしみじみとこう言います。
私は亡くなった曽祖父の顔は知りません。東京の屋敷の親族に焼き捨てられたために、写真もないので、祖母の語りを聞くのみです。
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