四 戦中花嫁

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四 戦中花嫁

 トヨが大人になった頃、姉のひとりが結婚することになりました。  相手は満州にいる日本人の男性。軍人さんです。本人たちは一度も会ったことはありません。親の決めた結婚です。当時、恋愛結婚はごくわずかだったようです。  姉の結婚の付き添いとして、トヨも一緒に満州に行くことになりました。そこで姉の結婚後も満州でしばらく暮らした後、トヨは東京には帰らずに満州に残ることにしました。  これからの女性に必要なのは仕事。手に職をつけようと思ったトヨはタイピストの訓練を受けます。その後、満州の陸軍に従軍タイピストとして勤めることになりました。  一方、私の曽祖父の息子である勇は、軍の階級試験を受けて合格。戦時中だけ将校の階級でいることになりました。出征先は満州、ロシアの国境近い駐屯地です。(姉の結婚相手の軍人さんとは別の人です)  数少ない従軍女性タイピストのトヨ。  大阪のぼんぼんだった将校の勇。  こうして二人は満州の地で出会うことになります。
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