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すらりと細く、しなやかな体つき、そこから伸びる細い手足。
やわらかなカールのかかる髪をひとつにまとめ、風がそれを揺らしている。そして、薄く微笑んだ唇からは美しい歌声があふれ出している。
その歌はぼくに語り掛ける。
決してひとりではない。
空も海も星も、太陽も、みなそれぞれ孤独でも、お互いがお互いを輝かせ生きていると。だから決してひとりではない、と
その美しく澄んだ歌声にぼくの瞳からすっと、涙がこぼれた。
思わずぼくは彼女に駆け寄り激しく抱きしめた。
ぐっと力をこめ、息もできぬほど、ぼくは彼女を強く、強く抱きしめた。彼女の腕が自然に、そっとぼくの腰に絡まってくるのがわかった。
その腕の感触にうっとりとしながら、ゆっくりと抱きしめている力を抜き、そして彼女の瞳を見つめた。
夜の海のような深い黒に、きらきらと星が瞬いているのが見えた。ぼくはそのままゆっくりと彼女に近づき、そして、キスした。
「きれいだ」
大海原のなかにたつ彼女は、まさしく海の女神そのものだった。
「ありがとう」
彼女の美しい唇から、ささやかれる言葉は、ぼくの耳に、そして心に強く響いた。
ぼくは彼女の手をそっと握り、
「僕と結婚してほしい」
そう伝えた。
「もちろん」
彼女からの返事を聞くと、ぼくはもう一度彼女をきつく抱きしめた。そしてそのまま何度もキスをした。一瞬で燃え上がった恋だった。
この海ですら焼き尽くすような恋に、ぼくは落ちていた。
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