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春の残映
「結婚したい」
あれは六年前の春の日のことだった。確かにそう言った。
「このたびは本当におめでとうございます――」
新郎側の上司のスピーチがあたりに響いていた。ありがたくも予定調和である言葉は、頭の中をゆるやかに素通りしていた。後で友人たちと行うサプライズの方に、僕は気を取られていた。
新郎と新婦は二人、時折目を合わせては、はにかんだ。幸せの空気というものがあるなら、きっとこんな感じなのだろう――彼らの間にはそれが惜しみなく放たれていた。花嫁の純白のドレスは、何度見ても美しいものだと思う。
花嫁姿の女性がまとっている美しさは、特別なものがあった。そして、それは、僕にどうしようもなく、彼女を思い出させた。
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